社員が定着する社内環境の条件とは?
目次
優秀な社員の退職は多くの企業の悩み
優秀な人材が退職してしまうという相談を受けることがしばしばあります。
経営者や人事担当者にとって人材の退職は大きな悩みであり、また、残された社員にとっても優秀な人材が抜けることで業務負担が増加したり、経験の浅い人材に責任を持たせたりした結果、不安や不満が高まり、更に人材が退職する、という悪いサイクルに陥り、会社全体に大きな影響を及ぼしてしまいます。

2024年版「中小企業白書」の中核人材に関するデータを見ても、74.5%の企業において、中核人材が不足していると回答している。
つまり4社中3社で、既に悪いサイクルになっている可能性もあると考えられます。
そうならないためにも、多くの企業では、

このデータのように、人材育成の取組みを増やすことで、「ある程度定着している」と回答した企業が、53.1%から61.3%に、即ち8.2%定着率が向上することがわかります。
その他にも、

このデータのように、「日々のコミュニケーションを行っている」と回答している企業では、中核人材が「定着している 74.6%」に対して、「日々のコミュニケーションを行っていない」と回答する企業では、中核人材が「定着している 59.7%」という結果になっていることから、日々のコミュニケーションによって、14.9%向上するという結果でした。
多くの企業が、中核人材が定着するための取り組みを増やしていることがわかります。
従来であれば、人に関わる課題は、多少後に回しても、なんとかビジネスは回っていたのかもしれません。しかし、このようなデータが示されるほど、人の問題が、企業経営の最重要課題になってきていることがわかります。
上記のデータ以外にも中小企業白書には、賃上げや専門性に応じた業務分担・配置、キャリアプランの明確化など、多くの企業が人材確保・定着に向けた人事関連施策を行っていることが示されています。
優秀な人材が退職したり、引き抜きされたり、なかなか採用が決まらなかったりするたびに、「他社の方が給与が高いから」「休暇が多いから」「(多少無理してでも)大手に負けない条件を用意しないといけない」といった待遇面を改善点として着目し、引けをとらない取り組みをされていると考えられます。
しかしこのアプローチでは、退職を留まった人材が、真にその条件に見合う成果を出さない限り、採用コストや人件費のような雇用コストが膨れ上がり、企業が存続できない、という状態にもなりかねません。
結局、人材が定着しないために、企業経営が右肩下がりになったり、逆に、人手不足解消を狙って、採用や定着のために好条件を揃えても、今度はコストが膨れ上がって企業の経営が傾いたり…と、多少オーバーかもしれませんが、まさに行くも返すも地獄、そんな厳しい状況になりかねない状況になってきています。
解決策の第一歩は「優秀な人材…」
では、どのような手立てを行えばよいのか?
まず最初に取り組むべき重要な手立ては、自社における「優秀な人材」の定義を明確にすることです。
意表を突かれた、と思う方もいるかもしれません。
「コミュニケーションが上手い」「営業成績が優れている」「人望がある」といった基準はどの企業でも共通であり、そのような人材は結果的に大企業や待遇の良い企業に流れてしまいます。
より具体的に、明確に、自社にとっての「優秀な人材」とはどんな人材なのか?を決め込んでいくのです。
解決策① 独自の基準を“理念に基づいて”構築する
優秀な人材の定義は、企業の理念に基づいたものにすると良いです。
理念は企業が100社あれば100通り存在し、それぞれの企業で異なる基準が求められるのが当然です。この基準をしっかりと紐付けることで、他社とは異なる独自の優秀な人材の定義を確立することができるのです。

自社独自の「優秀な人材」が定義できれば、仮に、誰とでもコミュニケーションが上手にできる人材が他社へ引き抜かれたとしても、嘆く必要はありません。
なぜならば、自社で大切にすべき、評価すべき優秀な社員が退職したわけではないからです。
解決策② 整えるべきは職場環境!
自社にとっての優秀な人材の定義が決まれば、その優秀な人材に適した職場環境や、仕事がしやすい制度を設計していきます。
例えば、「職場環境」という言葉を聞くと、多くの人が「立地が良いオフィス」や「自由に食事や飲み物が提供されるスペース」といった物理的な要素を想像されるかもしれません。
確かに魅力的ではありますので、資金力があれば、そのような職場環境を用意することで社員のエンゲージメント向上が図れるかもしれません。
このように多くの企業では、多くの社員にとって居心地の良い、定着してもらえるような環境をつくろうとします。ところが、多くの社員にとって良い環境をつくろうとした結果、他社と差別化できていない会社になってしまったり、誰のために設計したのかわからない設備や制度によって、機能しない仕組みや、一過性の取組ばかりが増えてしまったりしている会社もあるのです。
以前、ある会社では、社長肝いりのプロジェクトとして、社員の健康のためのトレーニングジムやサウナ、健康な食事が食べられる施設を用意したのですが、ほとんどの社員が活用しなかったため、この施設はその後、別の目的で利用する場所にリフォームされました。
解決策③ 制度設計の重要性
このようなことにならないためにも、経営者や人事が本当に取り組むべき職場環境の整備は、他社を模倣した環境ではなく、自社が定義した優秀な人材にとって考えられた職場環境づくりをすることが大切になります。

社風や制度は、目に見えないものですから、設計が重要になってきます。
例えば、自社にとっての「優秀な社員」は、どんな制度の下で働きたいのか?どんな職場環境を好むのか?何を評価すれば、わが社の優秀な社員は喜ぶのか?など、突き詰めて設計し、創り上げていくのです。
先ほどの例でいえば、定義した優秀な社員は、スポーツジムやサウナを好む人が多いのか?と考えれば、ジムやサウナを用意すべきかどうかの判断がつくのです。「ジムやサウナは、社員の健康にも良いだろう」と一般論で考えてしまうと、先のような結果になってしまうのです。
他にも、「オフィスは、立地の良い繁華街につくれば便利だろう」と一般論で考えてしまうことがありますが、自社の優秀な人材の定義に基づいて考えれば、たとえば、静かな場所にあるオフィスや、低層階で視線の先に緑が見える景観が良い、などの可能性もあるかもしれません。
設計のミスマッチを避ける
優秀な人材のために、細かいところまで考えた制度設計は、なかなか社内の人間だけでは気づきにくく、また部門や拠点別に、それぞれ文化や組織の慣習が形成されるため、簡単には解決に至らない場合も多いものです。
そのような場合は、社内の人間関係や習慣に縛られていない外部を活用するのも良いでしょう。
会社のフェーズに応じた優秀さの再定義
社風や制度設計には、その他にもポイントが沢山あります。
一例として、優秀な人材の定義は、会社の成長段階やフェーズに応じて変化するということも知っておかなくてはなりません。
例えば、上場を目指す企業であれば、上場準備の経験を持つ人材が必要です。一方、新入社員が多い場合には、人材育成に長けた人材が求められるでしょう。このように、企業の現状に即した設計も重要なポイントになります。
DREAMIXソリューションのご紹介

「優秀な人材が辞める」「定着しない」という現象を一律に捉えるのではなく、自社における優秀さの定義を再考し、独自の基準を構築することが重要です。
DREAMIXでは、理念から社風や制度などの作成から運用まで一貫したコンサルティングを行っています。真に企業に貢献する人材が働きたいと思う社内環境づくりに貢献します。
< 組織力強化サービスを見る >