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中期経営計画の作成に意味があるのか?

中期経営計画の作成に意味があるのか?

中計不要派の声①~中計病~

中期経営計画って作っても、意味ないんじゃないかな?

経営者や経営幹部のみなさんとお話すると、中期経営計画(以後、「中計」)が話題になることがあります。

実際、世の中には「中計病」という言葉までありますが、社内で中計を作成する時期になりますと、上記のようなセリフを聞くことがあるかもしれません。

経営企画室の方からお叱りを受けそうなセリフではありますが、案外その経営企画室の方をはじめ、部門長や経営陣の方が言われる場合も多いのです。

中期経営計画不要派の声

詳しく聞きますと、

「中計を作っても、いつも未達で終わるから」

「目標自体、関係者と調整した形式的な目標ですから、誰も本気ではないでしょう」

といった状況です。

その他にも、 

「業務で忙しすぎるから取り組めない」

「外部環境の変化が激しい時代に、必要か?

「お客様次第のビジネスなので、計画を作っても時間の無駄

社員の頭数が不足しているのに、それをPDCAで解決しろ、というのは無理な話」など、

目標設定や計画を立てても、その通り行かないのであれば、意味がないという意見が聞かれます。

中計不要派の声②~中計を達成しても、他の問題が~

目標や計画通りに行かないから、意味がない、という声のほかにも、

中期経営計画を達成している会社でも悩みがある

「以前、中期経営計画が達成した年がありました。しかし経営陣から『たまたま景気が良かったから』というひと言で済まされてしまい、以降、社員のやる気は低いままです」のような、

上層部からの動機付けに問題があるという声もありました。

「以前、中期経営計画が達成した年がありました。しかし経営陣から『たまたま景気が良かったから』というひと言で済まされてしまい、以降、社員のやる気は低いままです」のような、

上層部からの動機付けに問題があるという声もありました。

中期経営計画を達成している会社でも悩みがある

他にも、

「当社はセミナーや書籍を活用して、毎年、合宿をして計画を作成しています。経営計画手帳も作成し、育成や啓発に積極的です。しかし、中計に熱心なのは合宿に参加する担当者だけで、全社的には浸透していない」

という悩みもありました。

やはり、中計には意味がないのでしょうか?

長期経営計画と中計の時代的な背景(をつかもう)

中計の意味を考える前に、まずは中計の立ち位置について考えます。

中計は、5~10年の長期経営計画に基づいて、3年前後の計画として作られるものです。しかし、平成の頃から、

  • 時代の変化やグローバルの影響が大きくなるにつれ、長期計画の作成が困難になった
  • ビジョンを掲げる企業が増加し、長期計画の役割を「ビジョン」が担うようになった

などにより、長期経営計画の存在意義が疑問視されつつある状況になり、3年の「中計」が計画のメインなってきました

そして昨今は、計画よりもアジャイルな活動を重視する企業や、PMVV(パーパス・ミッション・ビジョン・バリュー)を提示し、PMVVの範疇(はんちゅう)で、年度経営計画を追う、あるいは自律的な活動に任せる、という企業も増えています。

中計必要派の意見~中計の役割~

一方、このような時代においても、「中計が必要」と考えている企業もあります。そのような企業では、中計をどのように捉え、どのような役割を期待しているのでしょうか。

主だったものをいくつか挙げてみました。

中期経営計画の役割
  • 投資家や金融機関、ステークホルダーの信頼を得る
  • 各部門、中計につなげて計画を立てることができる
  • P/L(損益計算書)だけではなくB/S(貸借対照表)を重視した経営になるので、安全性が高まる
  • 1年ではできないこと(人材育成・技術力向上・研究開発等)に取り組める
  • 外部環境が不確実な時代に不安になる社員に対して、3年先を見せることができる

等々、他にもありますが、中計にはメリットが多くあると言えそうです。

ここで注意してほしいこと
~メリットとデメリットだけでは危険~

このようなデメリット、メリットの順で書きますと、「やはりこのコラムでは、中計の作成を勧めるのだろう」と思われるかもしれませんが、この段階で自社にとって有意義な判断を下すのには、時期尚早です。

「メリットがあるから」と言って導入してしまうと、世の中には、実に多くのメリットがあるもの、便利なものが存在します。それらを社内に次々と導入することになり、社内はあれもこれもやらなければならないという状態に陥ってしまいます。

そうなりますとメリットを発揮する前に、使いこなせない、導入しても飽きてしまったり長続きしなかったりした結果、パフォーマンスやシナジーが発揮されないなどの状態になったり、社内の物事の優先順位が混乱したり、自社のブランディングが崩壊する可能性もあります。

つまりメリットがある、だけでは、逆に大きな未来のデメリットを生んでしまう場合があるのです。

どんなツールも全体設計を行った上で判断しよう

メリット、デメリットだけで判断するのではなく、

まずは自社にとってのメリット、デメリットを整理してみてください。

そうすることで、一方に偏らず、多角度で物事を判断できるようになります。

その次に、自社の現状から未来までの縦軸を明確にすることです。

自社の経営、即ち、自社の経営状況は、現状どうなのか?そして自社は将来、どこまでを目指すのか?どうありたいのか?という未来像までを含んだ目的を明らかにすることです。

中期経営計画の要否を判断する方法
中期経営計画の要否を判断する方法

このように多角度かつ時間軸で考え、企業の実態を全体的に俯瞰すれば、中計が自社に必要か否かが判断できるでしょう。

中計も経営上の「一つのツール」にすぎないのです。

つまり、中計を含め、様々なツールを導入する際、そのツールに意味があるのか、ないのか?の判断は、ツールのメリットとデメリットも検討した上で、目的である自社の理念体系から、現状である自社の経営資源、即ち人材、財務、社風までも含めて捉える、企業の全体設計を行った上でバックキャスティング※1によって判断することが重要なのです。

もちろん、全体設計なしで、フォアキャスティング※2でツールを導入し、トライ&エラーを高速で回して最適解を探る、という方法も、有効なやり方であり、いずれ自社にとっての最適な状態にたどり着くでしょう。

しかし中計のような、その効果性や有効性が3年後、若しくは数年を経た後になってようやく結果がわかる、というようなツールに関しては、「まずやってみてから判断しよう」という方法の場合、判断までにあまりにも時間がかかりすぎます

全体設計をする際の最重要ポイントは?

では、どのように自社全体設計をすれば良いのでしょうか。

そのために考察すべきポイントは、業種によって、また組織によって様々にありますが、
まずはこの3つを中心に検討してみましょう。

全体設計をする際の最重要ポイント

1.時間的にどうか?

自社が中期で考えるビジネスなのかどうか。

2.組織的にどうか?

例えば、営業中心の組織なのか、技術系の仕事が多いのか?

3.距離的にどうか?

ビジョンに対する距離がどうか。具体的なイメージが共有されているのかどうか。

自社の全体を考える際、最初は一旦、細かい事情や現状を省いて考えましょう。そして、その設計に照らして、自社にとってメリットとなるかどうか、検討してください。

結論

正解がない時代と言われる通り、何が正しいかを決めつけることができません。世の中全体に言えるような正解は、ない、わかるわけはない、と考えた方がよいのでしょう。

しかし、自社にとっての正解は、程度の差はあるとは思いますが、必ずあるものです。

一般に「今は、何が正しいかはわからないが、後になって、あれが正解だった、やってよかった、意味があった、と思うことがある」などのようなセリフをよく聞くことがあると思います。

つまり、後になれば正解がわかる、意味があったかどうかがわかるのであれば、今、「後の状態」、即ち、どういう状態になるべきか?を描き、バックキャスティングで考えれば、中計をやるかどうか、その意味が見えてくるのです。

DREAMIXでは、中期経営計画はもちろん、社内のあらゆる制度・仕組みがシナジー効果を発揮する様に全体設計を行い、御社を最適なパフォーマンスが発揮できる状態へコンサルティングします。

中期経営計画の作成にお悩みの方、作成はしているが効果を感じられていない方、まずはお気軽にご相談ください。

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